vol-313:派遣先は熟知しながら知らない振りをする
中小派遣会社が「不法就労」に手を染めている可能性があることは、現場で派遣外国人を使っている派遣先大企業は気付いているので、彼らの多くは、「派遣先免責論」を前提としたコンプライアンス態勢を敷いている。すなわち、不法就労があっても「知らなかった」「派遣会社に任せていた」と言い張るDon’t Know Defenseを実行し、「敢えて在留カードを確認しない」という実務を徹底。これが業界慣行となっている。もっとも、その一方では、派遣先は「善意」で、派遣会社が「悪意」という証拠を残すため、「派遣する外国人は、永住者や日本人の配偶者等に限る」とか「入国管理法上全く問題のない外国人だけを派遣すること」などという到底クリアできない条件を書面やメールで突きつけながら、「来月初から100人頼む」「来週からは50人要らない」などの需給調整を押し付ける。
そういう無理難題に対応できる中小派遣会社がいるはずはないのだが、派遣先大企業は「在留カードはそちらでチェックしてくれ。多忙で在留カードを確認する暇がない」とつぶやいて「解決策」を仄めかす。派遣先が「在留カード」を確認しないという環境の下であれば、中小派遣会社にとっては、「ほとんど摘発されることのない不法就労のリスクを取るか? それとも、派遣先大企業からの月数百万円以上の入金を失うのか?」という二者択一の問題。結局、ほとんどの場合、「不法就労」のリスクを取る。一度、「不法就労」のリスクを覚悟してしまえば、どんどんエスカレート。初めは「留学」で週28時間を数時間超えた程度で恐る恐る様子見していたのが、「技術・人文知識・国際業務」や「技能」の外国人をノーチェックで派遣するようになり、「どうせやるなら短期で大きく儲けた方がよい」ということで短期滞在や不法残留にまで手を広げていく。
無論、そういう中小派遣会社の中には、摘発される業者も出てくるわけだが、派遣先大企業は、不法就労が発覚しても、「知らなかった」「派遣会社に任せていた」と繰り返すのみ。前述した法理が素直に適用されるのなら、派遣先も摘発されて然るべきところだが、現実には、「就労状況は確認していたが不法との認識がなく、このような事態が発覚し大変驚いている。チェック体制をより強化していきたい 」「大変驚き、残念に思っている。委託業者と適切なプロセスを確認し、早急に改善に向けて対応していく 」「人員確保に必死でチェックは難しい。派遣会社との信頼関係もあり、身分確認はまかせている 」「在留資格などは原則として確認しているが、どうしてこのような事態になったか分からない 」と言い張るだけで派遣先大企業は無罪放免で終わる。このため、派遣業界においては、法理はともかくとして、業界慣行である「派遣先免責論」が勝ち続けている。
外国人派遣においては「不法就労」が摘発された場合であっても、逮捕されるのは、就労していた派遣外国人と中小派遣会社の役員・社員だけで、派遣先大企業はお咎めなしというパターンが定番。そして、無傷の派遣先大企業は、摘発された中小派遣会社が担っていた外国人派遣の部分を、他の中小派遣会社からの派遣を増やして対応する。この構造が完成してしまっているため、「不法就労」で中小の派遣会社が摘発されても、外国人の「不法就労」は絶対になくならない。派遣先大企業が摘発されない限り、この「違法派遣インフラ」は瓦解することなく、外国人派遣における「不法就労」をどんどん拡大再生産していくことになる。



