vol-1055:入管法に詳しくない警察官は派遣先を摘発できない
入管法は複雑怪奇。一般の人であれば、読むのが嫌になるほど大部で、在留資格が多様すぎて訳がわからなくなる。それは、検挙する立場の警察官も同じ。多種多様な犯罪がある中で、入管法だけを勉強する時間などない。現場の警察官が直面する犯罪のほとんどは、道路交通法違反か、傷害・盗難の類。入管法違反などは1%にもならないから、忙しい警察官には、入管法に詳しくなるメリットもない。
だから、現場の警官の入管法知識は極めて狭くて単純だ。「技術・人文知識・国際業務は、通訳・翻訳のビザだから、現場の仕事はできない」という短絡的な理解だけで検挙に向かう。「技術・人文知識・国際業務」のビザで「現場研修」ができることを明記したガイドラインを入管が出していることなど知る由もない。ガイドラインによれば、その外国人が日本に在留する予定の期間の半分までは「現場研修」ができることになっている。管理職候補の日本人を雇った場合でも「現場研修」は当たり前だから、当然と言えば当然だ。
まずは、現場で就労している外国人を「お前、こんなことしてよいと思ってんのか!」と脅しつけ、「このビザでこんな仕事したらダメなこと知っているだろ」と決め付けて、「ごめんなさい」と言わせて言質を取る。その上で、店長や社長に「現場で働いている外国人は違法だということを認めたぞ。こんなビザで働かせちゃダメだろう」と迫って「すいません」と言わせる。それだけの捜査だ。
その反面、派遣先の「不法就労助長罪」に関する教育は、ほとんどなされていない。そもそも、派遣先から「ビザについては派遣業者に任せていた」と言い張られて「知らぬ存ぜぬ」を決め込まれたら、入管法に詳しくないから、強く「違法性」を言い張ることもできない。結局「故意でなかった(刑法38条1項)」という言い訳を盾にされ、煙に巻かれて、派遣先の罪を問うことなく、派遣労働者と派遣業者を逮捕して終わりになる。本当は入管法(73条の2第2項)で「知らないことを理由として処罰を免れることができない」と規定してあるから、「故意でない」と主張するだけではダメなのだが・・・。
派遣先大企業は、そのあたりの現実を熟知しているから、入管法違反であることを知りながら、すべてを派遣業者の責任に押し付けるために「敢えて在留カードを確認しない」という業界慣行を遵守している。実際それでほとんどの大企業派遣先は言い逃れてきたし、逮捕もされていない。だから、違法な「外国人派遣」がなくならない。
厳密に入管法を読み解けば、派遣先にも在留カードの確認義務があり、その義務を怠っていた場合、派遣労働者が不法就労に当たるときは「不法就労助長罪」に相当し得る。しかし、警察という大組織において1%未満の犯罪のために、入管法を詳しく解説する余裕はない。だから、今日も派遣先大企業は余裕綽々で不法就労の外国人を使い続ける。そして、不勉強で素人の経営者が逮捕される。



