vol-340:技人国を雇っている社長は「サンマル事件」に学べ
入管法における「資格外活動違反」を理解するために、参考となるのが、「サンマル事件」(東京地裁判決:2016年4月25日)である。サンマルは、韓国食品の輸入を主な事業としていたが、韓国の大手放送局と総代理店契約を締結して、テレビ番組のコンテンツを、DVD媒体を通じて販売するようになり、併せてキムチの製造及び販売も手掛けるようになった企業であり、当時の決算における売上高は、韓国放送ビデオ50%、キムチの製造・販売25%、冷凍水産物の輸入等25%となっていた。2012年5月にガサ入れに遭ったサンマルにおいて、資格外活動として『人文知識・国際業務』を取得していた従業員1名(=従業員X)のほか数名が摘発されただけでなく、雇用主(韓国人)も不法就労助長として逮捕された事件のことを指す 。
ちなみに、「サンマル事件」で審議の対象になった従業員Xは、2010年5月30日に『人文知識・国際業務』の在留資格を「3年」の在留期間で取得していた。元の会社を2010年8月に退職し、2012年3月からサンマルのキムチ工場において、パック詰めされたキムチを段ボールに納め、工場内を清掃するなどの作業に従事していたところ、同年5月に逮捕された。
サンマルの雇用主は、裁判において、「ⓐ従業員Xは韓国放送ビデオの事業に携わる予定であった」「ⓑキムチ工場で行っていた作業は、サンマルの事業全体を理解してもらうための社内研修であった」と主張。つまり、『技術・人文知識・国際業務』で許容されている「実務研修」であると説明しようとしたが、客観的な証拠を提出することができず、「事後的な言い訳」に終始した。
東京地裁は、入管や警察から示された証拠を基に、 ①韓国放送ビデオの事業に関して説明したことがないこと、 ②韓国放送ビデオの事業に一度も関与させなかったこと、 ③勤務形態がキムチ工場のアルバイトと同様であること、 ④報酬がキムチ工場のアルバイトと同等であること、 ⑤キムチの段ボール詰めや清掃以外の仕事をさせていないこと 等の事実を積み上げて、「従業員Xに不法就労活動をさせていたものと認められ、雇用主の行為も不法就労助長行為と認められる」という判断を下した。
逆に言えば、サンマルの雇用主が、従業員Xに関して、「資格外活動ではない=『主たる活動』を行うための『従たる活動』である」ことを積極的に立証するつもりだったなら、 ①サンマルの事業全体の説明をしっかりと行い、 ②体験学習的なもので良いのでビデオ業務に参加もしくは講習したという記録を残し、 ③勤務形態をアルバイトと異なる体系で行い、 ④給与水準がアルバイトと異なるものであって、 ⑤明らかに単純作業とは言えない業務(企画・事務・営業・管理等)にも携わっている、 という証拠をすべて揃えておけば、裁判官の心象は異なり得ただろうし、さらに加えて、「実務研修計画」によって研修内容や研修期間を明示し、「研修担当」を任命していれば、研修活動(=「主たる活動」のための「従たる活動」)であるということを証拠で立証できたともいえる。
その場合、裁判所が「資格外活動違反」だと認定するリスクは大きく低減したに違いない。というのは、「外国人の主たる在留目的がその在留資格に基づき本邦において行うことができる活動から資格外活動に変更されたと認められる程度に資格外活動を行っている場合」だと断じることがかなり困難になるからだ。
もっとも、「サンマル事件」において、従業員Xは一番軽微なケースにすぎなかった。裁判においては、在留期限切れの不法残留者が逮捕されたこと、就労することができない『短期滞在』で就労していた者がいたことや、同社で在留資格変更が許可されたのに就労事実がない者がいること、あるいは、同社の取締役として『投資・経営』の在留資格を取得したはずの管理職が出資した事実がないこと等という事実が入管と警察から指摘されている。ここまでコンプライアンスが杜撰だったとすれば、サンマルをディフェンスすることは到底無理だったようにも思う。
いずれにしても、『技術・人文知識・国際業務』の外国人社員を雇っている社長や経営者は、「サンマル事件」を深く勉強して、自社のコンプライアンス強化に活用すべきである。



