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vol-349:イノベーションには技術とリベラルアーツが必要

2019年2月19日
読了時間: 3分

更新日:10月28日

  • 「技術の改善」の場合は、主要な顧客の意見を聞くことが極めて有効だが、「新たなニーズ」を掘り起こす「イノベーション」の場合、現在の主流派を形成している顧客の意見はあまり役に立たない。それは、その顧客自身が「新たなニーズ」に気付いていないまたは気付くことができないからである。

  • 例えば、エンタメ業界では、「マーケットインで広く作っていくと良い作品にならない」という不文律がある。例えば、NETFLIXでは、コンテンツの制作に視聴者データを利用させない。ユーザーがコンテンツにどう反応したのかをクリエーターには伝えず、あくまでもクリエーターの感性に委ねている。数字に囚われすぎると、同じものを何度も作ることになるからだ。データはあくまでも過去に起きたもので、未来がどうなるかを知らせてはくれない。

  • メディアでは、「イノベーション」における新技術等の「供給サイド」を重視しがちだが、本当の「イノベーション」は、世の中や人々の生活を大きく変革することを意味するから「需要サイド」に深く関わっている。多くの人々に受け入れられることがない限り、社会にインパクトを与えることはできない。大きな話題になったが破綻してしまったセグウェイを持ち出すまでもなく、「需要サイド」を無視した技術革新は、「イノベーション」というレベルにまで昇華することはない。日本でもフロントを無人化して人件費を大幅に減らしたホテルは、顧客に受け入れられずに失敗に終わった。アップルを創業したスティーブ・ジョブズは『イノベーションはテクノロジーとリベラルアーツの交点に生まれる』と説き、技術革新における「人間の思考や行動に関する洞察(リベラルアーツ)」の重要性を語っているが、セゾングループを築き上げた堤清二は『流通産業は、「資本の論理」と「人間の論理」の境界(マージナル)にある産業である』と主張し、『資本と人間との接点にビジネスが存在する流通業は、規模の拡大や利益一辺倒ではなく、人間の本質を理解した事業展開が重要になる』と説いていた。

  • 思い出そう。10年ほど前、「メガネ型ウェアラブルデバイス」が開発され、「スマートグラス」が発売され、センセーショナルな話題を巻き起こした。「眼球で端末を操作する」という極めて新しい技術は、多くの人々を驚かせ、専門家を熱狂させたものの、社会に浸透するに至らなかった。「眼球で端末を操作する」というスマートグラスが、大多数の人間にとって不自然だったのだ。

  • 近年でも、2022年、フェイスブックが、アバターとして仮想空間に人々が存在できる「メタバース」を始めた際、大いに話題となったが、時が過ぎると初期の興奮は冷めて大失敗。画期的な新技術だとしても、需要がなければ売れない。当たり前のことである。

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