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vol-360:AIが産み出す新商品は必ず過当競争になる

2019年3月5日
読了時間: 4分
  • 今後、AI が大量に産み出す「新商品」は、「アイデアレベル」に留まる「商品化」が主流になる。運が良ければ、発売当初は独占状態で千客万来になるかもしれないが、「新商品」の存在が業界内で知られるようになると、模倣する業者が湧いて出てくる。しかも、「アイデアレベル」に留まる「商品化」にすぎない場合、模倣されやすい「商品」にすぎないので、粗悪な模倣にとどめて粗利を稼ぐという業者もでてくる。その結果、叩き合いの価格競争が発生。「オンリーワン」という地位を失い、熾烈な値引き競争に巻き込まれていく。

  • 『クリア収納ケースは従来品より2割高い価格だったので、アイリスに大きな利益をもたらしましたが、あれよ、あれよという間に30社が乱立します。経営は競争です。ヒット商品を作ったからといって、いつまでも儲かるわけではない。ヒット商品であればあるほど、他社がそこに目をつけて、類似商品を出してきます』(大山健太郎:アイリスオーヤマ創業者)

  • 『どんなに個性的な繁盛店を作っても、その本質が既存業態の延長であれば、成功ノウハウはすぐ盗まれる。その上同じ商圏に大手が進出してくれば、個店はひとたまりもない』(安田隆夫:ドン・キホーテ創業者)

  • 実際のビジネスでは、「新商品」の投入で当初は成功したものの、参入障壁を構築できずに、結局、失敗した事例は枚挙に暇がない。ジェームズ・ダイソンが創業したダイソンは、紙パック式しかなかった日本の掃除機市場に、1998年サイクロン式(遠心分離集塵)を投入。吸い続けても吸引力が落ちないという特長を持ったサイクロン式掃除機の市場を当初独占したが、その後、三菱電機・シャープ・東芝が一斉に参入。サイクロン式掃除機の市場は急拡大したものの、ダイソンのシェアは大幅に低下。その後、羽根のない扇風機やドライヤーを発売して、世の中の話題をさらったものの、サイクロン式掃除機ほど成功することはできなかった。2023年に社運を賭けて新規投入したロボット掃除機も存在感が薄く、2024年7月に、社員3割を解雇するリストラに追い込まれてしまった。

  • アイロボットが開発した自動掃除機ルンバも同様だ。当初は70%を超える市場シェアを謳歌したが、日本の家電大手が続々と参入したほか、中国企業が安価な類似商品を投入したこともあり、業績が大幅に悪化する。アマゾンによる買収救済が破談になったことを契機に、2024年1月に創業者だったCEOが引責退任し、従業員を3割削減することになる。

  • 皮肉なことだが、極めて論理的で、多くの人が瞬時に理解できるような「ツルツル(=非の打ち所がないくらいピカピカ)」のビジネスモデルに基づいて成功した事例はほとんどない。というのは、そのビジネスモデルが、本当に「誰にでもわかりやすくて論理的」であったとすれば、すでに1万人の起業家は気付いているだろうし、100人くらいはとっくに挑戦しているはずだからだ。したがって、そういう「ツルツル」のビジネスモデルを実践した場合は、すでに苛烈な競争市場になっているという厳しい現実に直面するか、もしくは、ほとんどの人が気付かない罠が潜んでいて、その罠に嵌って失敗してしまうかのいずれかになる。西武グループの開祖である堤康次郎は、『役員会を開いて10人が10人「これは儲かる仕事だ」と言ったら止めろ』と釘を刺していたという。誰もが儲かると思えば、全員がその分野に参入し、競争が激しくなって儲からなくなるからだ。「理路整然=ツルツル=模倣されやすい=失敗する」という方程式は、こと「起業」に関する限り、かなり正しい。

  • 『未来に関わる構想のうち、必ず失敗するものは、確実なもの、リスクのないもの、失敗しようのないものである』(ピーター・ドラッカー:経営学者)

  • 『ビジネスはもちろん、他のどんなものでもセオリーなんかで経営できるものではない。実際、職業人としての私の全生涯を通じて、公式の組み合わせや図表や経営理論によって自分の会社を経営しようとした(いわんや、それに成功した)最高経営者(CEO)には、いまだかって出会ったことがない』(ハロルド・ジェニーン:ITT元経営者)

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