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vol-665:「イノベーション=技術革新」ではない!

2020年6月4日
読了時間: 3分
  • マスコミにおいて「イノベーション」という言葉は、「技術革新」という狭い意味で使われがちだが、「イノベーション」という言葉を産み出した経済学者ジョセフ・シュンペーターは、「イノベーション=ちがったやり方でことを運ぶこと」であると広く定義している。

    『商品供給方法の変化という言葉でわれわれはそれを文字通りに受け取れば合意するよりもはるかに広い範囲のできごとを考えている。まさに標準的事例として役立つかもしれない新商品の導入をも含める。すでに使われている商品の生産についての技術上の変化、新市場や新供給源泉の開拓、作業の再組織化、材料処理の改良、百貨店のような新事業組織の設立 ―― 略言すれば、経済生活の領域での「ちがったやり方でことを運ぶこと」―― すべてこれらのことはわれわれが革新(イノベーション)という言葉で呼ぼうとするものの事例である』 (ジョセフ・シュンペーター:経済学者)

    『イノベーションとは、顧客にとっての価値の創造である。それは科学的、技術的重要度ではなく、顧客への貢献によって評価される。イノベーションの必要性を最も強調すべきは、技術変化が劇的でない事業においてである』 (ピーター・ドラッカー:経営学者)

  • 経済学の巨匠として知られるジョセフ・シュンペーターは、イノベーションを実践する「企業家」と技術革新を実現する「発明家」を峻別している。すなわち、『企業家を定義づける特徴とは、単に新しいことを行ったり、すでに行われてきたことを新たな方法で行うということである』と極めてシンプルに定義づけて、『「新しいこと」は、壮大なことや歴史的に重要なことである必要はないことを、最初にまず指摘しておく。それはベッセマー鋼や内燃機関である必要はなく、ディアフット・ソーセージであってもかまわない』と述べた上で、『企業家を「発明家」から区別することが特に重要である。実際には多数の発明家が企業家になっているため、その相対的頻度を調査するのは興味深いことではあるが、この二つの機能の間に必ずしもつながりがあるわけではない。発明家はアイデアを生み出し、企業家は「事を行う」。この事というのは、必ずしも科学的に新しい何かを実現することである必要はない。また、アイデアや科学的な原理それ自体は、経済的な実業活動のために重要ではない』と的確に指摘している。イノベーションとは、「ちがったやり方でことを運ぶこと」であり、重要なのは「アイデアを生みだす」ことではない。実際に「事を行うこと」である。「製品を作る技術を持っている」ことと、「製品を商品として売り出す」ことは全く異なる。

  • 例えば、2009年にダイソンは、羽根のない扇風機エアマルチプライヤーを発売して話題をさらったが、東芝は、1981年に類似製品の特許を取得していた。じつは、ダイソンが2008年にエアマルチプライヤーの特許を申請した際に、英国の知的財務局が「あまりにも日本の発明と似ている」という理由で却下(その後、ダイソンは、東芝との違いを強調した形で特許を再申請)。発売を決断しなかった理由として、東芝は、「羽根なし扇風機は音がうるさい」「ファンとモーターが本体の中に隠れているから、汚れても掃除できない」「完璧を求める日本の消費者には受け入れられない」などの諸点を挙げていた。

  • また、パナソニックは、アイロボットよりかなり早い時期に、ルンバのような自動掃除機のアイデアに辿り付いていたが、「タンスにぶつかって載せている仏壇が振動し、ロウソクが倒れて火事になったらどうするんだ!」という理由で、一部の役員が大反対したため、自動掃除機を世に送り出せなかった。

  • ビジネスにおけるイノベーションを担うのは、新技術の「発明家」ではない。新しい製品を「商品」として世に送り出し、消費者の支持を広める「企業家」なのである。


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