vol-1111:難民申請に係る「60日ルール」を復活しろ!
難民申請については、入管法において、かつて「60日ルール」が設けられていました。これは、「申請は、その者が本邦に上陸した日(本邦にある間に難民となる事由が生じた者にあつては、その事実を知つた日)から60日以内に行わなければならない」ので、原則として入国後60日を経過すると難民申請を受け付けてもらえない、というルールです。
2004年の入管法改正(2004年6月公布・2005年5月施行)によって、この「60日ルール」は撤廃されました。そして、その撤廃措置と同時に、日本に上陸した日から6ヶ月以内に難民認定申請をした場合に「仮滞在許可」を付与できるという制度が導入され、実質的に「6ヶ月ルール」になることが想定されていました。
ところが、「60日ルール」の撤廃は広く知られるようになりましたが、「仮滞在許可」を申請する外国人はほとんどいません。また、入管のHPには、難民認定申請の「申請期間について制限する規定はありません」と明記されています。
この結果、偽装難民たちは、正規の「仮滞在許可」を申請するのではなく、いつでも自分の好きなときに難民申請するという自由を得ました。つまり、現在の偽装難民問題は、「60日ルール」を撤廃した際に、難民認定を悪用する輩が大量に発生することを想定できず、良心的な「仮滞在許可」に収斂するだろうという甘い予測に頼り切り、結果的にその予測が外れたために発生しているわけです。
じつは、入管が設置した専門部会は、2003年12月24日に「難民認定制度に関する検討結果(最終報告)」を答申し、「60日ルール」を「6ヶ月ルール」もしくは「1年ルール」に変更することを提言していました。もし、この提言を取り入れていれば、偽装難民問題がいまほどの混乱を示すことはなかったのですが、読みの甘い入管は「仮滞在許可」という新しい制度で吸収できると考えて、「60日ルール」を撤廃してしまったわけです。その意味で、現在の偽装難民問題は、入管に責任があります。
したがって、現在の偽装難民問題は「60日ルール」を復活させれば解消します。「60日ルール」が厳しすぎるというのなら、「仮滞在許可」に合わせて「6ヶ月ルール」にすればいい。入管は、自分たちが起こした問題なのですから、過去のミスを尻拭いするために「60日ルール」もしくは「6ヶ月ルール」を改めて導入すべきです。
【参考資料】
難民認定制度に関する検討結果(最終報告)2003年12月24日
いわゆる「60日ルール」、すなわち難民認定申請を60日以内に行うという期間制限が厳格に適用されれば、難民条約上の難民に該当する者であっても、60日以内という申請期間を経過したことを理由として難民認定を受けられないという不当な結果を招きかねない。そのため、「60日ルール」の厳格な適用は行わず、申請期間内に申請されたかどうかにとらわれず,難民であるかどうかの実体審査を重視すべきであるとの批判があり、これが難民不認定処分取消訴訟における主要な争点の一つになっていると指摘されている。
他方、60日を経過した後の申請であっても、申請が遅延したことに「やむを得ない事情」があるときは申請が許容される旨の規定があるが、「やむを得ない事情」をいたずらに拡大して運用するのではルールの形骸化を招き、申請期限を無意味なものとするおそれがある。
専門部会においては、これらの批判や問題点を視野に入れながら、申請期間を設けることの当否及びその期間の長短等について検討を加えたが、我が国に庇護を求める者は入国して間もない時期に申請を行うことが通常であると思われること、また、無期限に申請を認めると証拠の散逸等により適正な難民認定が妨げられるおそれがあるばかりか、濫用者を誘発するおそれもあること等から、申請期間を設けることには、現在でも合理的理由があると考える。そして、この申請期間の問題を、難民認定制度全体の中での公平性、透明性にかかわる問題と位置付け、我が国が、今後、積極的に難民を受け入れていく姿勢を国際社会に示すメッセージとして、申請期間を現在より延長し、これを6月ないし1年とする方向で法改正されることを提言した。
第159回国会 衆議院 法務委員会 2004年5月21日
上田勇(公明党):今回のこの法案では、特に、これまでいろいろなところからも改善の御要望がありました難民申請期限のこと、現行の制度では、難民の認定申請は本邦に上陸した日から60日以内に行わなければならないという、よく60日ルールというふうに言われておりますが、が定められておりますが、今回、この法案ではこれを廃止することになっております。従来から、この六十日ルールというのは、申請した時点で60日を過ぎているから無効であるという、いわば門前払いになるというようなことも指摘されてきたところでありますので、この廃止をするということは大きな効果があるのではないかというふうに思います。そこで、その廃止の理由、また、期待される効果につきまして、見解を伺いたいというふうに思います。
増田暢也(法務省入国管理局長):委員御指摘のいわゆる60日ルールにつきましては、証拠の散逸などによって適正な難民認定が妨げられることや、あるいは濫用者の誘発を防止するといった観点から設けられていたものでございますが、今回、難民認定手続を大幅に見直しまして、仮滞在許可制度を創設することなどによりまして、早期の申請が促され、証拠の散逸が防止できると期待されますことや、単に退去強制を免れることのみを目的とした難民認定手続の濫用防止が図られることなどを踏まえまして、この60日という申請期間は廃止することといたしたものでございます。難民は、国際情勢やあるいは本人の属する地域、国の情勢等の変化に応じて発生するものでございまして、いわゆる60日ルールを廃止することで、直ちに難民認定申請者が増加するといった効果があるとは考えられませんが、しかし、我が国の難民受け入れに対する前向きな姿勢を国際社会に示すメッセージとして意義があるものと考えております。
山内おさむ(民主党):難民認定の申請期限、いわゆる60日ルールを撤廃する趣旨はどういう理由でしょうか。
中村哲治(民主党):現行の出入国管理及び難民認定法第61条の2第2項にはこのように書かれております。「前項の申請は、その者が本邦に上陸した日(本邦にある間に難民となる事由が生じた者にあつては、その事実を知つた日)から60日以内に行わなければならない。ただし、やむを得ない事情があるときは、この限りでない。」このように規定がされております。このいわゆる「60日ルール」については、そもそもこのように申請者の権利を制限する合理的な根拠が薄弱であります。また、これを厳格に運用すると、申請期限の徒過という形式的な理由のみをもって難民条約上の難民が難民に認定されないこととなります。これは難民の保護、受け入れを義務づけた難民条約の趣旨にもとることとなります。以上の理由から、いわゆる60日ルールを撤廃することとしたものでございます。



