vol-126:「目立つプロモーション」は避けるべきである
新興企業は、必要に迫られて商品や会社のプロモーションを実施する場合であっても、テレビCMやイベントなど「話題」化を目的とする「目立つプロモーション」は絶対に避けるべきである。『売上が上がると、競合に目をつけられ、競争が激しくなり、利益率は下がる。目立つプロモーションは会社にとってメリットがまったくない。テレビCMをたくさん打っても、売上も利益も出ないケースがある』(木下勝寿:北の達人コーポレーション)からだ。世の中に広く知られることを目的にするのではなく、自社が狙うターゲット層のみに認知されることに絞り込んだ「目立たないプロモーション」に知恵と予算を集中すべきである。
北の達人コーポレーションを創業した木下勝寿は、『極論を言えば、購入者だけに商品の存在を知ってもらえればいい。むやみに知名度を上げようとするとコストがかかるので、買う人以外には認知されないようにしたい。商品を必要とするお客様だけに知ってもらい、そのお客様と長くお付き合いする。少しずつお客様が増え、結果的に知名度が上がるのが理想だ』と述べており、会社が目立つ必要がないことを説いている。
『「北の達人」は目立たないプロモーションを行っている。ネット広告は商品ごとにはターゲットを絞って出稿する。だから、ターゲットの外には認知されていない。たとえば、若い人でウェブマーケテイングに興味のある人は、「北の達人」は知っていても、「北の快適工房」という健康食品、化粧品のブランドについてはほとんど知らない。・・・広告の目的は目立つことではない。利益を生み出すことだ』(木下勝寿:北の達人コーポレーション)
その点で、新興企業が参考にすべきなのはサイゼリヤだ。チェーンストアでは、売上高の5~8%の広告費を掛けるのが相場とされているが、サイゼリヤは、一切広告をしないことで知られている。サイゼリヤは、「お店で出している価格そのもの」が「広告になっている」と考え、頑なに「広告に回すお金があったら、少しでも良い食材を使って、お客さまに還元する」というポリシーを貫いている。サイゼリヤ創業者の正垣泰彦は、『私は広告宣伝や販促をしたことはないが、仮にそれらを実行して一時的にお客様が増えても、急な客数増による慣れない仕事で現場が疲れるだけだ。やみくもに販促をしたり、安易なひらめきでアイデア商品を投入したりする店もあるが、短期的には売り上げが増えても、生産性を下げ、長期的には店の力を弱くしてしまうだろう』と述べている。
人材業界で言えば、1989年に創刊された求人情報誌「DODA」(学生援護会発行。現在はパーソル傘下)のテレビCMが大ヒットし、「転職する=デューダする」と言われるまでになった時期がある。「DODA」は「転職情報誌の代名詞」となり、知らない人はいない状況となったが、その状況であっても、リクルートの転職情報誌「ビーイング」は、求人広告掲載の売上高で「DODA」を上回り続けた。つまり、「DODA」は「知名度」で「ビーイング」を圧倒したのだが、売上高では「ビーイング」に勝つことができなかった。要するに、『知名度がなくても実力があれば売れる』(木下勝寿:北の達人コーポレーション)のである。



