vol-203:日本企業が導入した「ジョブ型」は紛い物が多い
日本企業で広まっている「ジョブ型」は紛い物が多く、「業務上の成果を出して評価が高いと上位の等級に昇級できるが、逆に評価が低いと職責を果たしていないと見なされて、降級・降格が発生する」という「ジョブ型」の特徴を逆手に取り、「給与を上げず、下げやすくする」ために利用されている。その程度の代物を必要以上に礼賛する論説は、あまりにも胡散臭い。
本来の「ジョブ型」は、雇用契約時で結んだ「職務」は固定され、賃金も原則として変わらない。また、職務変更や配属先の異動・転勤は本人の同意を必要とするなど会社の人事権を大幅に制限する制度だが、日本企業における「ジョブ型」の多くは会社が異動・配置の人事権を捨てていない。要するに、「仕事」で規定されるはずの「ジョブ型」ではない。
そのような日本企業が多いのは、人事権を保ちつつ、「脱年功序列」を進めるのに「ジョブ型」という「仕組み」が便利だからである。必要なスキルを持つ外部人材を市場価格で調達できるメリットに加え、異動させることで幅広いビジネス分野で活用できる。成果評価による昇進と降格、それに伴う賃金の増減で、人件費を固定費から変動費化できるというメリットもある。もっとも、少なからぬ大企業における本音は、「反論が少ない『ジョブ型の導入』というお題目で、全体の人件費を引き下げる」ということであろう。
無論、日本企業の人事制度に課題が少なくないことは事実だが、だからと言って、欧米の社会制度や企業風土を背景に発展してきた「ジョブ型」にいきなり変えても成功することはない。欧米型の「ジョブ型」を受け入れる日本企業の風土が変わらない中で導入した場合、効率を上げるどころか、社員の士気の低下を招いて、生産性を下げてしまう可能性が高い。この点、パナソニックを創業した松下幸之助は『年功序列30%、抜擢70%になると非常に面白いと思うのだが、そうするには小学校の教育から抜本的に変えていかねばならないだろう』と的確に指摘していた。



