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vol-245:市場調査していたらホンダは北米進出しなかった

2018年9月12日
読了時間: 3分
  • ホンダが北米に持ち込んだ50㏄の配達用バイク「スーパーカブ」は、凄まじい「イノベーション」だった。当時の米国人はオートバイを主に長距離ドライブ用に使っており、最も重視される特性は大きさ・馬力・スピード。そこでホンダは、高速で馬力のある大型オートバイ(250cc・350cc)を特別に開発して米国に乗り込んだのだが、その大型オートバイはコスト以外には秀でたところがなく、ほとんどのバイクディーラーはホンダの製品を扱うことを拒否。

  • つまり、ホンダが詳細な市場調査をしていたら、「米国に進出すべきではない」という結果が出ていたに違いない。もっとも、新規の分野を探索する際、「市場」がすでにそこにあって、「市場」の規模が大きいので、「市場」のニーズを分析して、適切な「市場」のセグメントを選択し、「市場」に参入すれば、「市場」での競争に勝ち残れるはずだ ―― という机上の計算で実行した「イノベーション」で成功した事例などない。

  • ホンダが持ち込んだ大型オートバイは、長時間の高速走行をした場合、エンジンがオイル漏れを起こし、クラッチがすぐに摩耗してしまうなど、米国のハイウェーで使用するには不向きであった。このため、市場で有利な地位を築いているハーレーダビットソンに対抗できないことは明白だった。

  • このため、ホンダの大型オートバイは不振を続けたが、ホンダの出張者たちが「自分たちが街中を移動する手段」として米国に持ってきた50ccの「スーパーカブ」(販売用ではない)が現地住民たちの目に留まる。「スーパーカブ」が「レクリエーション用のオフロード・バイク」として人気が出る可能性があることに気付いたホンダは、「スーパーカブ」を販売し始めたが、大型バイクのディーラーが取り扱ってくれなかったため、スポーツ用品店等を説得して販売を開始。独創的な広告キャンペーンが奏功したこともあり、予想を超えて、爆発的に売れた。

  • ホンダを創業した本田宗一郎は、『フランス女と市場調査くらいあてにならんものはない・・・実際女心はあてにならない。・・・需要があるからつくるというのはメーカーではない。メーカーはパイオニアである以上は、あくまでも需要をつくり出すものである。だから未知にいどんでいるはずだ。未知な製品を大衆に聞いてあるいたって答えが出っこないではないか』と述べているが、「破壊的技術」であったスーパーカブという「未知な製品」が未知な市場である北米市場でどれだけ売れるかということについては、本田宗一郎やホンダだけでなく、誰にも予測がつかなかったと言ってもよい。

  • 日清食品を創業した安藤百福が『市場調査の結果は、過去のデータの集大成にすぎない。これで将来を決定することは危険である』と警告していたように、もっともらしい市場調査はできるし、洗練された理論に基づく市場予測は披露できるが、「正しい予測」は不可能である。「イノベーション」は、AI の結論を覆す人智の結晶から生まれるものなのである。

    『真に独創的な商品は市場調査から生まれることはない。大衆は作家ではなく、批評家なのである。作家である企業家が自分でアイデアを考えずに、大衆にそれを求めたら、もう作家ではなくなる』 (本田宗一郎:ホンダ創業者)

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