vol-697:世界で戦うユニクロの強みはじつは日本式経営である
ユニクロを創業した柳井正は、「泳げない者は沈めばいい(注:Sink or Swim)」という激しい言葉で知られている。実際、ユニクロの人事は、年功序列などまったく関係のない徹底的な実力主義が採られているので、外からは「ゲゼルシャフト(機能的組織)」的な社風と見られがち。しかし、創業者の柳井正は「日本の強みをユニクロの強みとする」と明言している。日本では、「ゲゼルシャフト」を志向していると見られがちの柳井正ですら、じつは「ユニクロはゲマインシャフト(共同体組織)だ」と認識していることを重視すべきだ。要するに、多くの日本企業にとって、異なる文化の下で形成されてきた「ジョブ型」を基盤にして人事制度を組み立てるのは完全なナンセンスなのである。 (注)『Sink or Swim』は、柳井正が最初に述べた台詞ではなく、元々は、マイクロソフトを創業したビル・ゲイツの言葉である。彼は、「この激動期において、生き残るにはどうすればいいのか?」と問われたときに、インターネットという「破壊的イノベーション」をビジネスにおける「津波」に例えて、「溺れたくなければ泳ぐしかない(Sink or Swim)」と語った。
『外資系の会社では人間関係がドライだ。自分は報酬をもらって、自分の信条とは関係なくその仕事をしている。あるいは、会社そのものへのロイヤリティーではなく、自分の専門職種へのこだわりがあって、いろんな外資系の会社を転々とする中で自己実現のためにたまたまその会社にいる、ということもあるだろう。日本の会社の場合には、会社に対してロイヤリティを感じながら、自分の生活の中に仕事があって自己と会社が切っても切り離せない状態になるという人が多い。そういう意味からすると、わが社は後者に近いので、外資系の会社に勤めていた人がわが社に来たら、やはり外資系でなく日本の会社だと感じると思う』(柳井正:ユニクロ創業者)
実際、ユニクロは、「全員経営」を掲げ、「全員でユニクロの価値を創り、全員で顧客に伝えていこう」という大方針を掲げているが、この「全員経営」という大方針は「ジョブ型」の対極にある。この点を創業者の柳井正は、『競合相手の欧米グローバル企業では、「ジョブ型」でガチガチに固められた店員が顧客接点の最前線にいる。そこが差別化になる』と踏んでいる。
「ジョブ型」は、自らが果たすべき機能の「インプット」で仕事が定義されるが、「日本の強み=日本型経営(メンバーシップ型)」では、「こういうモノを作るために働きます」という「アウトプット」にコミットする形で仕事が与えられる。「ジョブ型」だと「それは私の仕事じゃありませんから」という機能分業の理屈が通るが、「メンバーシップ型」だと「成果を実現するためには私がそれもやっておきましょう」という柔軟性が生まれる。割り当てられた仕事だけをする「ジョブ型」の仕組みは、職場のチームワークを機能させなくする。
「日本の強み」で戦うユニクロが、どこまで世界で通用するのか楽しみだ。



