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vol-95:値段を上げることが付加価値だと思うのはアホ

2018年2月5日
読了時間: 3分
  • 競合他社に対する参入障壁を堅牢に維持していくためには、顧客還元を徹底することにより、対外的には「魅力的な利益率」や「成功しやすいビジネス」に見せないようにすることが肝要であり、「低いコスト構造」を堅持していくことが極めて大事である。

  • 赤城乳業の「ガリガリ君」は、日本で一番売れているアイスキャンディーだが、2016年に1本70円に値上げするまで、25年間、1本60円の価格を維持した。この低い単価では、高価格アイスクリームに比重を移してしまった大手乳業メーカーは参入しにくい。赤城乳業は、「低コスト構造」を堅持することによって、大手乳業メーカーにこの市場への参入を諦めさせている。

  • あるいは、ダイソーの場合、総合スーパー等の「売り場」を借りながら、100円の商品だけを移動販売する「百均」という「新業態」を開発したが、その事実が業界で知れ渡ると、知名度で勝る大手企業が「百均」に参入。歳月をかけて開拓した「売り場」を取られてしまう。しかし、新規参入した大手の「100円均一」は安物ばかりだったため、ダイソーの「100円均一」に大きく見劣りした。結果的に、軒先を貸していたスーパー等はダイソーに再び声をかける。創業者である矢野博丈は、「100円で売ると50円儲かる商品」と「100円で売ると1円しか儲からない商品」があった場合、いつも『1円しか儲からない商品をたくさん売る』ように指導してきた。1円しか儲からなくても、お客さまが喜ぶ商品は、ほおっておいても飛ぶように売れる。矢野博丈は『お客さん第一主義を貫いてきて、原価をギリギリまで上げておいたことで、結果オーライだった』と回想している。

  • 「100円均一」は、顧客に支持されなければ成り立たない。自社の利益に優先し、顧客を二の次にしていれば、そっぽを向かれる。東京や大阪からやってくる移動販売の大手業者は、原価が20~30円しかしない商品を混ぜて100円均一で販売していたが、ダイソーは、固定客を相手に移動販売をしていた(年に5回も回る「売り場」もあった)。毎回買いに来てくれる客に対して、変な商品を販売するわけにはいかない。原価をギリギリまで上げ、商品数を他店の2~3倍にすることにより、「おおっ、これ100円だって!」「こんな100円均一なんて初めて見る」という驚きの声が顧客から上がるように常に工夫。100円の商品を売って、利益が1~2円というケースもザラであった。

  • ダイソーが成長できたのは、「百均」という「新業態」は利益が出にくいので、大手が参入しなかったという面が大きい。実際、バブル時代には見向きもされなかった。「1000個や1万個の仕入れでは、大手がすぐに参入してくる」と読んだ矢野博丈は、1個の商品を仕入れる際に100万個を買うように厳命。『在庫をどんどん増やせ。在庫は宝じゃ』と号令。100万個仕入れた場合、仕入先のメーカーは一気に生産ができず、10万個ずつくらいしか製造・発送できないため、大手がダイソーの仕入先から真似して仕入れようとしても仕入れられない。この仕掛けが功を奏したため、後になって、ダイソーを真似て「88円ショップ」を立ち上げたダイエーはうまくいかなかった。

  • 要するに、「低コスト体質」を練り上げた上で、顧客にとって魅力的な価格を提示できる企業だけが「付加価値」を創り上げることができる。原価が上がったという理由で値段を上げたり、人件費が嵩んだので製品価格を引き上げることは、「付加価値」の創造とは何ら関係がない。

  • 日本のメディアでは、ビジネスに無知な経済学者が「付加価値を上げるために値段を上げるべきだ」とか「一人当たりの生産性を高めるために価格を引き上げた方がいい」などという顧客を無視した戯言を未だに吐き続けているが、そういうアホたちのいうことに耳を傾けていたら、早晩会社は潰れてしまうだろう。

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