vol-1058:「短期滞在ビザ」から「特定技能」に変更する?
2~3年前までは、入管が「短期滞在ビザ」からの在留資格変更申請を受理していましたから、オーバースティに対しても甘いということが全世界に知られるようになると、ブローカーや業者たちは、踏み込んだ対応を仕掛けていました。それは、①海外在住の外国人を「認定申請」で「就労ビザ」の許可を獲得してから入国させるという正規のルートを無視して、②海外在住の外国人を、まず「短期滞在」で入国させてから、「就労ビザ」への在留資格変更を申請させるという手口です。
この手口は、特に「特定技能」において散見されていました。というのは、海外在住の外国人を「特定技能」で入国させるという正規のルートの場合、海外の送り出し業者において、当該外国人から手数料を取ることが禁じられているからです。つまり、海外の業者は「特定技能で日本で働けるよ」というキャッチフレーズで希望者を募り、多額の手数料を個人に支払わせるのですが、「短期滞在ビザ」で来日させ、日本で提携している業者が「短期滞在ビザ」から「特定技能」に変更するという手順を取るのです。そうすれば、海外で徴収した手数料は「違法行為」になりません。海外の業者は「特定技能」の在留資格取得に関与していないので、徴収する手数料が「研修費」や「日本語教育費」や「海外渡航費」であれば、「特定技能」になる予定の外国人からもらっても問題なくなります(注)。
(注)より手堅く「特定技能」に課せられた規制を逃れたいと考える海外の送り出し機関は、まずは「技能実習」で日本に送り出し、来日してからの1年間で特定技能の試験と日本語の試験に合格させ、「技能実習」から「特定技能」に変更するという技を駆使していました。
中には、上記の海外の送り出し業者の役割を日本国内で演じている業者もいました。要するに、日本から「特定技能で日本で働きたい人は支援しますよ」という謳い文句で客を募って、高額の手数料を受け取ったうえで、「特定技能ビザの申請は、日本に来てからやります。その方が早いので」と説明し、「短期滞在ビザ」で入国させる。入国後のケアは他の業者に任せて、予め手配した受入企業への顔見せをさせたら、在留資格変更は提携する行政書士に丸投げ。表面上は、「短期滞在ビザ」で入国した外国人が直接受入企業の面接を受けて、「短期滞在ビザ」から「特定技能ビザ」への在留資格変更を申請しただけなので、入国前に受領した手数料は問題になりません。
当時、「短期滞在ビザ」で入国させてから「就労ビザ」に切り替えるサービスを提供している業者は大勢おり、HPなどに、「原則、短期滞在から他の在留資格に変更するということは認められていません。入国管理局に問い合わせをしても、『できません』と言われますので予めご認識ください。ただ、実務ベースで言うと、短期滞在から就労ビザに変更できる方法はあります」「原則的な対応では、『やむを得ない特別の事情』を認めてもらえないため、短期滞在から就労ビザへの変更は認めてもらえません。しかし、それにもかかわらず、なんと『やむを得ない特別の事情』を認めてもらえる方法があるのです。それが在留資格認定証明書を入国後に取得する方法です」「短期滞在(観光)ビザ取得者であっても就労ビザに切り替えさえすれば、日本で就労可能になります。条件次第では帰国せずに日本でそのまま就労することが可能です。その条件とは、在留期限が1ヶ月~1ヶ月半以上残っている状態で内定を出した場合です」などと、入国後に「短期滞在ビザ(観光・知人訪問)」から「就労ビザ」に変更すればよい、というニュアンスで大々的に宣伝していました。
こういう商売が成り立つのは、有象無象の外国人を受け入れる「巨大な受け皿」が日本側にあるからです。そして、その「巨大な受け皿」の中核を構成しているのは「派遣先大企業」と「外国人派遣会社」です。短期滞在ビザの外国人だけでなく、不法残留外国人や偽装難民をも呑み込む「巨大な受け皿」であり、必要であれば、偽造在留カードも手配します。「短期滞在ビザ」で来日した外国人は、正規の「就労ビザ」への変更申請を行いつつ、就労できないはずの「短期滞在ビザ」で派遣労働に加わります。そして、「就労ビザ」への変更が叶わず、オーバースティになった場合であっても、この「受け皿」に泣きつけばなんとかしてくれます。「短期滞在ビザ」の外国人で商売する業者たちは、日本全国にネットワークを持つ有象無象の「受け皿」があるから安心してビジネスができるのです。
「短期滞在ビザ」関連のビジネスが盛んになったのは、「入管法の原則を遵守させることができない甘い入管」と「どんなビザの外国人でも吞み込んでしまう受け皿」が存在しているために、美味しいビジネスチャンスを狙った業者やブローカーが続々と参入していることに因るものです。入管が「短期滞在ビザ」からの在留資格変更を認め続け、「違法就労の温床」になっている大手の「受け皿」が摘発されない(時折、零細企業が摘発されるだけで、大手は無傷)ままなのであれば、「短期滞在ビザ」で日本に入国しようとする出稼ぎ外国人が減ることはないでしょう。
最近の入管行政が正常化しており、上記の問題は完全に解決していることを祈ります。



