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vol-1036:サナエノミクスで景気は良くなっているのか?

9月15日
読了時間: 4分

更新日:5 日前

  • 株価が大幅高になったことなどを背景に、「高市政権による経済政策(サナエノミクス)は上手く機能している」と短絡的に論じるコメンテーターが少なくない。しかし、本当に景気は良いのだろうか?

  • 経済関連統計をつぶさに見てみよう。年間累計の倒産計数は、2025年1月から1万社超え。前年比もじりじりと増加し、+7%近くに上昇してきた。素直に読めば、景気が良いとは思えない。

           倒産件数

          (年間累計) 前年比

    2026年1月  10,292件 +2.6%

             2月  10,357件 +2.9%

             3月  10,427件 +3.5%

             4月  10,498件 +3.6%

             5月  10,434件 +4.8%

             6月  10,593件 +5.8%

             7月  10,674件 +6.2%

             8月  10,750件 +6.9%


  • 実際、企業倒産が増えている中で、世の中的には「人手不足」が根強く喧伝されてるものの、有効求人倍率(実数)の数値を見る限り、「好景気に伴う力強さ」は一切窺われない。

            正社員求人数       パート求人数

          (前年比)有効求人倍率 (前年比)有効求人倍率

    2026年1月  ▲4.4%  1.04倍   ▲5.9%  1.24倍

             2月  ▲4.2%  1.02倍   ▲5.4%  1.24倍

             3月  ▲4.4%  0.99倍   ▲5.5%  1.18倍

             4月  ▲4.4%  0.95倍   ▲5.6%  1.03倍

             5月  ▲4.7%  0.94倍   ▲6.0%  0.97倍

             6月  ▲2.6%  0.96倍   ▲3.1%  0.98倍

             7月  ▲1.7%  0.98倍   ▲3.2%  1.03倍


  • その点、「景気は良くない」という現場実感と大きく違うのが賃金動向。毎月勤労統計の賃金は、7月に前年比+5%近くに達するなどめちゃくちゃ強く、この数値が「景気はいい=サナエノミクスは機能している」という強い根拠になっている。しかし、民間の人材会社が公表している時給の前年比は1%前後に過ぎず、毎月勤労統計のイメージとは大きく異なる。

        毎月勤労統計  マイナビ【バイト】エンジャパン【派遣】

      (給与総額・前年比)(全国・前年比) (三大都市・前年比)

    2026年1月  +2.5%    +3.1%     +0.7%

             2月  +3.4%    +2.5%     +0.7%

             3月  +3.1%    +2.3%     +0.7%

             4月  +3.6%    +0.4%     +0.5% 

             5月  +3.3%    ▲0.4%     +2.2%

             6月  +4.0%    +0.1%     +0.8%

             7月  +4.7%    +1.1%     +0.9%          8月  n.a.      ▲1.2%        n.a. 


  • さらに、違和感が強いのが、消費の実勢。家計調査が実質ベースで8ヵ月連続で前年割れを示しており、名目ベースでも弱いにもかかわらず、家計調査を含めた推計値であるはずのGDPにおいては、かなり高めで評価されている。この点、「給料は上がっているのに消費が不振」という図式になっており、極めて不可思議。GDPと毎月勤労統計は、家計調査の結果とあまりにも乖離している。

          家計調査(前年比) GDP家計消費(実数・前年比)

            名目   実質    名目  実質

    2025年12月  ▲0.3% ▲2.6%  +4.0% +1.3% 

    2026年 1月  +0.7% ▲1.0% (2025年10月~12月)

               2月  ▲0.4% ▲1.8%   

               3月  ▲1.3% ▲2.9%  +3.3% +1.2%

               4月  +1.0% ▲0.5% (2026年1月~3月)

               5月  +1.3% ▲0.4%   

               6月  ▲1.5% ▲3.3%  +3.6% +1.0%

               7月  ▲1.5% ▲3.6% (2026年4月~6月)


  • 実際、コンビニの売上高も低迷を続けており、消費者物価との関連で、実質ベースで見れば、おそらくマイナスになる感じ。少なくとも、毎月勤労統計が示しているような賃金上昇の力強さによる消費の後押しはない。もっとも、毎月勤労統計には、2018年~2019年に発覚し、国会で紛糾した統計不正問題という前科があるので、信頼性は決して高くはなく、今回も背後に何かあるのかもしれない。

         コンビニ売上高 消費者物価(前年比)

          (前年比) (除く生鮮食品・エネルギー)

    2026年1月  +1.6%    +2.6%

             2月  +2.1%    +2.5%

             3月  +2.2%    +2.4%

             4月  +0.7%    +1.9%

             5月  +1.2%    +1.8%

             6月  +0.3%    +1.7%

             7月  +1.1%    +1.9%


  • 景気判断をする際に重要な参考値とされる日銀短観は、じつは、「金利を上げたい」という上層部の意向を忖度する支店長が関与する調査(特に大企業)なので、「DI(良い-悪い)」は実力以上に良くなりがち。そもそも、統計の連続性を担保するため、アンケートの対象になる中小企業には、倒産しそうな小さな会社は入らないから、実勢よりも「景気が良い」というバイアスがかかる(中小企業として選ばれるのは、地元の老舗が多い)。一般庶民が感じている景気の実感を知るには、「生活意識に関するアンケート調査」のほうが良い。

                    日銀短観(良い-悪い)     生活意識調査

                大企業     中小企業 (良い-悪い)(増-減)  

              製造業 非製造業 製造業 非製造業 景気 暮らし 収入

    2025年10月~12月  +16 +36  +7  +17  ▲50 ▲52 ▲12

    2026年 1月~ 3月  +17 +36  +7  +16  ▲46 ▲48 ▲7

    2026年 4月~ 6月  +22 +37  +9  +15  ▲57 ▲50 ▲11


  • したがって、上述した経済指標を総合的に評価すれば、大企業を除いて、景気は決して強くはないと見た方がいい。高市政権は「景気の腰は強い」という前提で、各種の経済政策を組み立てているように見えるが、その前提が誤っているのだとすれば、経営者としては、きめ細かな対策を用意しておかなければなるまい。

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