vol-1127:山下法務大臣の不作為で事態はさらに悪化する
2020年以降、わが国の入管行政はユルユルになった。コロナのパンデミックが襲来する中で、入管は右往左往して、「入管法の枠組み」さえ無視するようになった。そして、本来であれば、とっくの昔に強制送還しておかねばならなかった長期収容者の多くを「仮放免」で世間に解放し、野放しにしてしまっただけでなく、「禁じ手」の在留資格である「特定活動(帰国困難)」を認めてしまう。「帰国できない」と言い張れば、日本に在留し就労もできるビザだ。2020年12月には観光客でも「帰れない」と言い張れば、就労できるようになった。関係者の間で「コロナビザ」と呼ばれる、この在留資格は、日本の在留資格制度を腐らせて、在留外国人の遵法意識を喪失させてしまった。
この「コロナビザ」を導入したこと自体については、当時の事情を考えれば致し方ない面が多いし、機動的に対処したことによって理不尽な境遇に陥りかねなかった多くの在留外国人を救ったという功績は大きい。ただし、問題は、パンデミックが終結し、飛行機便で帰国できるようになった後も廃止されることなく、ダラダラと運用が続けられてしまったことだ。2021年春には、7月開催のオリンピックが近づき、帰国できるような状況になり始めていたにもかかわらず、廃止の動きはなかった。
このため、入管の現場では、「帰国困難である」や「帰国できない事情」に関する解釈が区々になり、混乱してしまった、実務的には、「帰れない」と主張した場合は、「コロナビザ」を認める運用に統一されていく。その結果、日本の在留資格制度は、実体のないユルユルのものに堕し、在留外国人はビザ期限すら気にしなくなってしまった。「帰れない」と主張するだけで、在留できて就労できるのだから、それも当たり前の話。ビザ期限すら守らない外国人は、他の日本のルールなど知らないし、守る意志があるはずもない。
じつは入管は、コロナビザを許可する際に、外国人から誓約書をとっていた。そして、その誓約書には「航空便の運航状況が改善するなどし、帰国が可能となった場合は速やかに帰国します」と明記されていた。すなわち、入管は、航空便が飛ぶようになったから、帰国しなさい」と指導し、コロナビザの発出を止めればよかっただけなのに、それをしなかったのである。そういう背景があって、近年になって外国人犯罪が急増していくことになった。
コロナビザは、遅まきながら、2022年秋より、漸進的に廃止されていったが、多くの「コロナビザ」の外国人は、不法残留者の予備軍となった。しかも、入管がその事実を隠すために、「特定活動(帰国準備)」を与えた後に帰国しなかった場合に「短期滞在」のビザを与えるというとんでもない「裏技」を駆使したために、表面化しない「不法残留者予備軍」も多数に上った。一部には「特定活動(特定技能1号準備)」という「裏技」で表面化させない事例もあった。
無論、現在は「コロナビザ」は廃止されているし、「裏技」も影をひそめた。ところが、変な形で「合法移民」に対する嫌がらせが手を変え品を変えてひどくなる一方で、「不法移民」の撲滅は本格的に着手されていない。ハッキリ言って、まだまだだ。不法就労をさせている疑いがある企業は摘発せずに放置しながら、そこで就労していた外国人の在留期間更新申請を不許可にする。オーバースティの外国人は警察が連れて来ても「即仮(=即日仮放免)」で野放しにするのに、在留資格変更申請で不許可になった外国人には「特定活動(出国準備・30日)」を交付して、「30日以内に帰国しないと収容されるよ」と脅しつける。
どうして、オーバースティや偽装難民を徹底的に摘発しないのか? どうして、オーバースティや偽装難民のシェルターになっている派遣先企業を家宅捜索しないのか? どうして、とっとと強制送還すればいいのに、収容を長期化させて「仮放免」や「監理措置」に逃げようとするのか?
しかし、新しく就任した山下法務大臣は、官僚答弁を立て板のごとく流暢に話すだけで、入管現場の問題に着手する気概はない。①オーバースティと②偽装難民と③外国人派遣を徹底的に取り締まるだけなのに、それをしようとしない。要するに、現在の「外国人問題」は、入管行政による「人災」なのだ。このまま山下法務大臣の不作為が続くならば、事態はさらに悪化していくだろう。



