vol-319:在留カードを確認するだけでは免責にならない
更新日:10月26日
「不法就労助長罪」に抵触しないためには、「在留カード」を確認することが必要である。しかし、「在留カード」の確認は必要条件であって、十分条件ではない。「在留カード」を確認しても、「在留カード」から得られる在留資格の関連情報を無視して、「資格外活動」に従事させれば「不法就労」になるからだ。例えば、特殊な料理を創る「活動」が許された「技能」という「在留カード」を確認した上で外国人を雇用した場合、いかに「在留カード」を丁寧に確認したとしても、専ら事務や広報等の業務に就労させたら「不法就労助長罪」に相当してしまう 。「身分・地位に基づく資格」以外の在留資格には「活動範囲」が定められており、「在留資格が許容した範囲」の中で業務を与えなければならない。
したがって、実務としては、「在留カード」を確認するだけではコンプライアンスとしては不十分である。当然と言えば当然のことだが、
㋐「在留カード」を確認し「在留資格が許容した活動範囲」を認識した上で、
㋑ 就労場所において「在留資格が許容した活動範囲」の中で業務を指示する、
という2つの基本実務が揃ってはじめて、「過失がなかった」という事実の立証ができるということになる。
上記の指摘に対して、少なからぬ派遣先は、「在留カードの確認は、派遣会社に任せていた」「派遣会社が在留カードをチェックする約束だった」「派遣会社を信じていた」という「派遣会社への責任転嫁論」を言い募れば免責されると考えており、これが実態的には派遣業界における業界慣行となっているが、この主張は根拠薄弱である。
というのは、入管法第第73条の2が規定する「①(派遣先の)事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者」であり、かつ、「②外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者(=外国人に指揮命令した者)」に、「派遣先」が相当することは明らかであり、派遣先が自己の就労場所において、外国人を「不法就労」させていた場合、「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」の対象となることからは逃れられず、そのリスクから逃れるためには、「過失がなかったこと」を立証するしかない。「派遣先に過失がなかったことを立証する」代わりに、「派遣会社に過失があったことを立証した」としても、「派遣先に過失がなかったこと」にはならず、免責されないからである。
冷静に入管法の法理を確認しよう。「身分・地位に基づく資格」ではない在留資格の場合、就労場所における「活動」には一定の制限が課せられている(例えば、「技能」の在留資格で、「技術・人文知識・国際業務」の「活動」はできない)。前述したとおり、「不法就労」を防止するためには、
㋐「在留カード」を確認して「在留資格が許容した活動範囲」を認識した上で、 ㋑ 就労場所において「在留資格が許容した活動範囲」の中で業務を指示する、
という2つの基本実務がセットになる。
そして、派遣契約において、就労現場における業務を「在留資格が許容した活動範囲」の中で指示できるのは、派遣先だけである。派遣会社は、就労現場において指揮命令する権限を持っていないから、事実上、外国人労働者の「活動」を「在留資格が許容した活動範囲」の中にとどめる手段がない。したがって、入管法を遵守させる指揮命令権限を持っている派遣先が、入国管理法を遵守させる手段を持たない派遣会社に対して、「在留カードの確認義務を怠った業者が、不法就労の全責任を負うべきだ」と説く主張には、明らかな「過失」がある。
派遣先は、「在留カードの確認は、派遣会社に任せていた」という「派遣会社への責任転嫁論」を言い募れば免責される、という思い込みに頼って運営していると、入管や警察が本気になったときに手痛いダメージを負うことになる。



