vol-325:派遣先は厚生労働省の指導を無視している
派遣先の一部は、入管法が要請するコンプライアンスをまっとうするには、「就業現場において、『在留資格が許容した活動範囲』の中で業務の指揮命令を行う必要があり、派遣会社にその権限はない」という事実を棚に上げて、「外国人を派遣する派遣会社は、外国人派遣の専門家であり、その専門家に適切な外国人の派遣を依頼したのだから、派遣先の過失はない」という主張を強弁する。しかし、派遣先は、厚生労働省が定めた「派遣先が講ずべき措置に関する指針 」を遵守する義務があり 、この指針を遵守するためには、実務上「在留カード」の確認が必須となる。したがって、「派遣先だから『在留カード』を確認する必要はない」と強弁する現在の業界慣行は、厚生労働省の指針とも相容れない。
まず、「派遣先が講ずべき措置に関する指針」は、「派遣先は、労働者派遣契約の締結の申込みを行うに際しては、就業中の派遣労働者を直接指揮命令することが見込まれる者から、業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、当該業務を遂行するために必要とされる知識、技術又は経験の水準その他労働者派遣契約の締結に際し定めるべき就業条件の内容を十分に確認すること」と定めており、外国人派遣の場合、「当該業務を遂行するために必要とされる知識、技術又は経験の水準その他労働者派遣契約の締結に際し定めるべき就業条件の内容」の中に「在留資格」が含まれるべきであることは明らかである。したがって、労働者派遣契約に明記するか否かはともかくとして、「合意した就業条件」において在留資格に関する条件が含まれていなかった場合は、派遣先の「過失」となる。
そして、「派遣先が講ずべき措置に関する指針」では、「労働者派遣契約で定められた就業条件について、当該派遣労働者の業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある者その他の関係者に当該就業条件を記載した書面を交付し、又は就業場所に掲示する等により、周知の徹底を図ること」となっており、「定期的に派遣労働者の就業場所を巡回し、当該派遣労働者の就業の状況が労働者派遣契約に反していないことを確認すること」が定められているから、「当該派遣労働者の業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある者その他の関係者」には、明記されているか否かはともかくとして、「就業条件」のひとつとして合意した「在留資格」であるか否かを確認する義務が課せられていると考えるべきである。
「当該業務を遂行することのできる在留資格であること」が合意されていた場合、「当該派遣労働者の業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある者その他の関係者」は、「当該業務を遂行することのできる在留資格であるか否か」を確認するために、「在留カード」を確認せざる得ない。あるいは、「就業条件」のひとつとしての合意がなかった場合には、「当該業務を遂行することのできる在留資格であること」が契約する際の当然の大前提になっているとみなすことができるため、「当該派遣労働者の業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある者その他の関係者」は、「当該業務を遂行することのできる在留資格であるか否か」を確認するために、やはり「在留カード」を確認しなければならない。
さらには、「派遣労働者を直接指揮命令する者に対し、労働者派遣契約の内容に違反することとなる業務上の指示を行わないようにすること等の指導を徹底すること」となっているから、「派遣労働者を直接指揮命令する者」は、当該派遣労働者の在留資格を確認した上で、その「在留資格が許容した活動範囲」の中で業務上の指示を行う必要がある。また、「派遣先は、労働者派遣契約の契約期間が満了する前に派遣労働者の責に帰すべき事由以外の事由によって 労働者派遣契約の解除が行われた場合には、当該派遣先の関連会社での就業をあっせんする等により、当該労働者派遣契約に係る派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ること」が求められている から、派遣外国人の在留資格に係る情報を得ておくことは必須になる。したがって、派遣先は「在留カード」を確認しなければならない。
なお、労働者派遣法 は、派遣先に対して、派遣労働者に対する教育訓練を実施する義務を課している。派遣外国人に対して教育訓練を施す際には、当該外国人の「在留資格が許容した活動範囲」の中であるか否かを確認する必要があるため、この観点からも派遣先は「在留カード」を確認しなければならない。また、「派遣先は、派遣先責任者の選任に当たっては、労働関係法令に関する知識を有する者であること」を求めており、派遣先責任者が入国管理法(労働関係法令に含まれる)について知識を有していることは当たり前であり、「在留カード」の確認義務という基本実務は知っていて当然ということになる。
「派遣先は免責」という歪んだ現在の慣行は、そろそろ是正されなければならない。



